弧を描くようなガイドセッティングが印象的なスパイラルガイド。皆さんはご存知ですか?
初心者の方にはあまり馴染みが無いのかも知れませんが、あの強烈な個性はとても目を引くデザインですし、何よりカッコイイですよね。(好き嫌いはあると思いますが)
今ではスパイラルガイドの認知度も上がって数社からリリースされるようになりましたが、スパイラルガイドのメリットやデメリットはまだまだ認識されていません。
その上、ネット上では様々な情報が飛び交っていて、いまいちスパイラルガイドについての正確な情報が掴み難いのも事実です。
そこで今回は、このスパイラルガイドをメインテーマに据えて、ちかみやがロッドテスター、ロッドビルダーとして得たスパイラルガイドの真実を皆さんに解説したいと思います。
Contents
スパイラルガイドとは?

スパイラルガイドが始めて広く認識されるようになったのは、おそらくメガバスのF7-711(通称セブンイレブン)というロッドがリリースされてからだと思います。
当時、企業としても勢いのあったメガバスが7フィート11インチもあるロングレングスにスパイラルガイドというものすごく尖ったスペックのロッドをリリースしたのはとてもセンセーショナルでした。
(7.11ftというのはトーナメントで使用出来るレギュレーションギリギリの長さであり、6ftや6.6ftが標準だった当時ではとても異端的な存在でした。)
スパイラルガイドの特徴は何と言ってもその個性的なガイドセッティングにあります。
バットガイドを起点として2番3番(セッティングによっては4番も)ガイドを螺旋状にセットする事で、その後のガイドをスピニングタックルと同様に下向きにセットするガイドセッティングの手法になります。
必然的にトップ寄りのガイドを下向きにする為のガイドセッティングですから、スピニングタックルには無縁の話になります。
スパイラルガイドのメリットとデメリット
スパイラルガイドのメリット
ちかみやが現在テスト中のロッドには、スパイラルガイドを採用しているロッドも少なくありません。
・スパイラルガイド最大のメリットはロッドの”ねじれ”を克服出来る事
皆さん、竹の串で遊んだ事はありますか?
焼き鳥やバーベキューなどで使われる竹串でもかまいません。
この竹串を10本まとめて折り曲げ、真っ二つにしようとイメージして下さい。
なんとなくイメージ出来るかと思いますが、最終的に分断するには雑巾を絞るようにして、ねじ切ってしまうのが一番早いです。
竹の繊維というのはタテに入っているので、上下、左右からの負荷にはめっぽう強いですが、雑巾を絞るように捻じられると繊維が破断しやすくなります。
では質問を変えて、
大人の親指くらい太い竹串と、焼き鳥に使われる竹串。あなたがねじ切りやすいのはどちらですか?
焼き鳥の串の方ですよね。もちろん、焼き鳥串の方が細いので破断強度も低いです。
これらの特徴は魚釣り全般に使われるカーボンロッドも全く同じ特徴を持っています。
カーボンブランクの特性が解ったところで話をロッド構造の話に戻します。
ベイトロッドのガイドはロッドブランクの上に取り付けられます。
そして魚がヒットした場合、魚との綱引きが始まる訳ですが、ロッドには必ず下方向に負荷が掛かります。
この時にロッドの上に取り付けられたガイドには下方向に引っ張られる力が働いて、ガイドが横に倒れ込もうとします。
下方向に負荷が掛かるとガイドは矢印の方向に倒れ込もうとします。
これがロッドに起こる”ねじれ”の正体です。
仮に下方向へ真っ直ぐ負荷が掛かったとしても、ガイドはその構造的な理由によって必ず右か左のどちらか一方へ倒れ込むように作用してしまいます。
ガイドが右か左、どちらか一方の横方向に倒れ込みながら引っ張られる為、結果としてブランクがねじられる形になるわけです。
ねじれはファイト中だけでなく、キャスト時にも影響を及ぼします。
ねじれが起こったロッドは本来のポテンシャルがスポイルされて、トルクやリフティングパワーが低下してしまいます。
また、ロッドがねじれる事でガイドセッティングによってはラインがブランクに接触する場合もあります。ラインがブランクに接するほど絞り込まれたロッドはかなり捻じられた状態と言え、ラインブレイクはもとより、ロッドが折れる一歩手前、限界の状態と言えます。
スパイラルガイドは破断強度の高いブランクの太い部分で予めガイドを下向きにしてしまう事で、そのセクションでねじれを受け止め、一番捻じれやすく、一番捻じれの影響を受け、捻じれに弱い細いティップやベリーの部分をこの捻じれの現象から解放し、ブランクの持つ性能を常に100%引き出そうとするガイドセッティングになります。
スパイラルガイドのメリットは上記したものに加え、ロッドビルドの世界ではガイドを下向きにする事でブランクとラインの接触を心配せずに済む事からガイドの数を減らす事ができ、よりブランクの性能を引き出す事が出来ます。
これらの効果は特にブランクが細くなりがちなベイトフィネスロッドや、マイクロガイドを搭載したロッドと相性が良く、組み合わせて使う事でロッドの飛躍的な性能アップにつながります。
また、副次的にロッドティップの糸絡みが減少するという効果もあります。
ソルトウォーターでバーチカルのジギングをベイトでやると結構な頻度でトップガイドにラインが乗ってしまいますが、スパイラルガイドならこのトラブルは皆無になります。
スパイラルガイドのデメリット
スパイラルガイドのデメリットは色々と散見されますが、実はほとんどありません。
飛距離が落ちる、キャストアキュラシーが低下するなどの話を聞きますが、実際のところ、ほとんど影響が無いというのが使い込んでみた正直な感想です。
スパイラルガイドは良くリールに偏ってラインが巻かれてしまうという話を聞きますが、
それはそもそものガイドセッティングに問題がある可能性が高く、
レベルワインダーが付いているベイトリールでは本来発生し難い現象のはずです。
頻繫に発生するようであれば一度ガイドセッティングを見直した方が根本的な解決になる可能性が高いですね。
スパイラルガイドにデメリットを強いて言うのであれば、使うリールを選ぶ傾向にある。という部分でしょうか?
スパイラルガイドのメリットを最大限に発揮するのであれば、
ガイドが倒れこむ方向と、使うベイトリールのハンドルの位置を逆側にする必要があります。
例をあげると、左巻きのリールを使う場合は右側に倒れ込むスパイラルガイドのセッティングのロッド、右巻きのリールなら左側に回って行くガイドのロッドを使います。
左巻きのリールを使っている場合、特に制限が無ければ、左肩の方向にロッドをあおる事が多いと思います。
このフッキングの場合はガイドが身体の内側に向かってスパイラルする事になる為、外側にフッキングパワーが逃げずにパワーロスを最小限に抑え事ができ、効率良くフッキングパワーを伝える事が出来ます。
ではガイドの方向とリールがマッチしていない場合はどうなるのか?
もしくは通常とは逆側にフッキングしてしまった場合は?
その場合は特にスパイラルガイドのメリットがなくなるだけで、通常のガイドセッティングのロッドと同じ性能になってしまうだけなので心配はいりません。
番外編
ではなぜスパイラルガイドセッティングのロッドはリリースが少ないのか?
ここまで読んでくれた方なら「もっとスパイラルガイドのロッドがリリースされても良いのに・・・」と思っている方も多いと思います。
ではなぜメーカーはなかなかスパイラルガイドのロッドをリリースしないのか?
それは先ほどのリールのハンドルとガイドの関係に秘密があるんです。
スパイラルガイドのメリットを最大限発揮させるにはリールのハンドル位置によってガイドのセッティングも変更はしなければならないと解説しました。
つまりメーカーは全く同じロッドでも、スパイラルガイドを採用した場合、右巻きリール用と左巻きリール用の2タイプを用意しなければなりません。
これはとても手間とコストが掛かることなんです。
単純に同じロッドで2タイプですからコストも手前も2倍掛かるのに、売上は1本分しかもらえません。
ましてやスパイラルガイドを搭載するマニアックなロッドなんて、ほとんどの場合何かに特化したスペシャリティーロッドになるはずなので、そもそもたくさんは売れないでしょう。
それでは始めからどちらか一方(左回し、右回しのどちらか)に決めてリリースすれば良いのでは?と思うかもしれませんが、それではスパイラルガイドを採用したメリットが半減してしまいます。スパイラルガイドを採用しても、メリットが無いのであれば、わざわざ手間とコストを掛けてまでスパイラルガイドにこだわってリリースする理由が無くなってしまい、素直に通常のガイドセッティングでリリースした方が生産コストや販売価格も抑えられるので、結果的にメーカーにとってもユーザーにとってもメリットが多いという事になってしまいます。
こういった事情からスパイラルガイドを採用したロッドというのは、メーカーにとってなかなか作る事の出来ないロッドになってしまっています。
スパイラルガイドはこう選ぶ!
ではここで、スパイラルガイドの導入を検討している方にロッドを選ぶ時のポイントをお教えします。
ガイドの向きは右回し、左回し?
これは先ほどのガイドセッティングとリールのハンドル位置関係でご説明しました。
ご自身がメインで使うリール、そのロッドと組み合わせる予定のリールに合わせて選びましょう。
ガイドの角度は45度?60度?
この項目は主にロッドビルドやカスタムでスパイラルガイドを採用する時、ご参考にして下さい。
スパイラルガイドにはバットから3番目までスパイラルさせる60度セッティングと4番目までスパイラルさせる45度セッティングがあります。
60度セッティングは45度と比べ急激にラインの位置を変化させるので、ガイドのやブランク、ラインに掛かる負荷や抵抗が大きくなります。
その代わりに短いスパンで変換を終えるのでガイドセッティングの自由度が高くレングスの短いブランクでも採用出来ます。
これらの特徴から60度セッティングはブランクの太く、それなりにウエイトがあるルアーを使うフィリッピングロッドなどのカバー用ロッドやビッグベイトロッドなどに向いています。
対して45度セッティングは、ロッド全体で負荷を分散する事ができ、緩やかなカーブを描いてガイドを下向きにするので、ラインがブランクに干渉するリスクを最小限に抑えられます。その結果、どうしてもラインとブランクのクリアランスが確保しずらいマイクロガイドを採用したロッドや、ベイトフィネスなどのブランクがやや細めのロッドなどと相性が良く、このようなロッドで採用すればブランクの性能を引き出しやすいセッティングになります。
スパイラルガイドのまとめ
見た目の印象が強いスパイラルガイド。しっかりとメリットを理解していれば高い実釣性能を発揮してくれる素晴らしいガイドセッティングと言えます。
スパイラルガイドの説明は以上で終了になります。
イメージしている事を言葉に変換して説明するのは思いのほか難しく、ところどころ説明がおぼつかない部分がありましたが、スパイラルガイドの利点や選び方、ビルドやカスタムをする際の参考になりましたでしょうか?
スパイラルガイドに限らず、ガイドセッティングというのはとても奥の深いもので、一概には言い切れない部分がたくさんあります。
ここで解説したものは、そのほとんどが一般論を参考に、ちかみやがロッドビルディングの実践や仲間との実釣を通して得た経験をフィードバックして書き記したものです。
今回はこの記事を書き始める前に心配してた通り、非常にマニアックな内容になってしまいました。このような記事に需要があるのか解りませんが、皆さんのお役に立つような情報を含んでいる事を願っています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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