「魚に近い場所で活躍するタックルほど、しっかりとした基本性能が大切になる」
様々なフィッシング・シーンで有名なこの言葉ですが、ロッドとリール、ラインとルアーというシンプルな構造ながら、タックルの総合的なセッティングバランスを求められるルアーフィッシングほど、この格言が当てはまる釣りはないでしょう。特に魚と直接接するフックの善し悪しは、時として釣果を大きく左右する非常に重要な要素であり、エキスパートの中には副次的な効果を狙って、わざわざ新品の純正フックを交換するアングラーさんも数多くいるのも事実。今回は実釣至上主義のエキスパートが実践している釣果が伸びるトレブルフックのサイズの選び方と、様々なトレブルフックを試してきた私自身がおすすめする最強のトレブルフックを紹介します。
Contents
トレブルフックを交換する理由と得られるメリットとは?
ひと昔前まではフッキング性能の劣るアメリカ産ハードベイトの実釣性能UPやフックポイントのなまりやサビ、折れなどのフックのトラブルに対処する事がハードベイトにおけるフック交換の大きな理由となっていました。しかしながら昨今ではリリースされているトレブルフックの完成度が非常に高く、様々なメリットをが得られるのも事実。ここではフックを交換する事で得られる主なメリットを紹介します。
フッキング成功率のUP
フックを交換する一番の理由は、何と言ってもフッキング成功率の向上と言えるでしょう。化学研磨やフッ素コーティングなどフックに求められる性能だけにフォーカスして作られたトレブルフックの実釣能力は純正フックの比ではありません。特に1匹の釣果か厳しいようなタフな状況では皮一枚で掛かるのと掛からないのでは大きく変わってきます。いくらアングラーのスキルが高くても、プレミア価格で取引先のされるほど釣れるハードベイトでも、バイトをしっかりとノセる事が出来なければ意味がありません。フック交換におけるフッキング成功率のUPはハードベイトの実力を引き出すための第一歩と言えるでしょう。
キャッチ率のUP
せっかくのビッグフィッシュをもう少しのところで取り逃がした・・・お手本のようなバイトにフッキングもバッチリなのになぜかフックアウトしてしまった・・・こんな経験、皆さんにも一度はあるのでしょうか?この様な時は大抵フックを折られたり、伸ばされたりしている場合がほとんど。ファイト中のフックトラブルは対峙する相手が大きくなればなるほど、また、強引なファイトをすればするほど多くなりますが、どんなに注意を払っても金属疲労や強度の低下は避ける事が出来ません。釣果を下支えしてくれるエース級のハードベイトではその傾向が強くなりますが、純正のフックでは対応出来ないような状況もしばしば。そんな時はフックを太軸に変えたり1サイズ大きくするだけでトラブルは激減します。自らが通うフィールドの特性や魚のサイズに合わせてフックをチョイスすることはキャッチ率を上げる最も有効な近道となっています。
ハードベイトの基本性能UP
ハードベイトのアクションレスポンスは、ボディ全体の重量が軽ければ軽いほど上がるという事実はルアーフィッシング中~上級者であればご存知ではないでしょうか?もちろん、ハイレスポンスなハードベイトが必ずしも良いワケではありませんが、基本的には全体ウエイトを軽くして運動性能を上げた方がハードベイトのポテンシャルというのは引き出せると言えるでしょう。フックによっては全体で1~2g程度の軽量化にもつながり、アクションの質が見違えるほど良くなる事が多々あります。また、フックのサイズを調整するだけで障害物を回避するためのスナッグレス性能やキャスタビリティー性能UPも期待できるので、ハードベイトの基本性能向上にはフックの交換、見直しが必須と言えるでしょう。
上:ボーマー社が純正採用するアメリカ生まれのトレブルフック
下:ショートシャンクなど様々な先端技術の採用でクランクベイトの性能を底上げしてくれるガマカツのトレブルRB‐Mのショートシャンク仕様
同じクランクベイトでもフックを変更するだけで戦闘力が大幅に上がる事も珍しくありません。
トレブルフックのサイズを選ぶ方法と重視する要素とは?
フック交換には、単にフッキング成功率の向上はもちろんの事、ハードベイトの持つ本来の性能を引き出すといった効果も期待出来ます。純正フックにウィークポイントを持つ画像のピーナッツやファットペッパーJrなどはフックを交換するだけで劇的に実釣性能が上昇する具体的なルアーと言えるでしょう。
では、具体的にトレブルフックを交換したい場合、どの様な部分に気を付けてフックをチョイスすれば良いのでしょうか?ここでは私自身がフックを選ぶ時に重視しているサイズの選定方法とフックに求める要素をご紹介します。
基本は純正で搭載されているフックのサイズを参考にする
純正のフックを外し社外のフックに交換する場合、特別な理由や狙っている効果が特にない場合は、先ず純正で採用されているフックのサイズと合わせる事をおすすめします。市場に出回っているハードベイトは様々なテストを繰り返し、ベストなバランスでリリースされているので、純正フックと同じサイズを使ってその違いを見れば、フックを交換した効果や次なるチューニングの方向性を確認する事も出来ます。純正フックと同じ番手ならハードベイト本来のバランスを大きく崩す事なく、確実に基本性能をUPさせることが可能なので純正採用されているフックサイズをフック選びの参考にしてみましょう。
ハードベイトのレスポンスを左右するフックの重さを重視する
先ほどの項でも触れたように、ハードベイトにとってボディ全体のバランス見直しや軽量化はアクションのキレにもつながり、本来そのハードベイトが持つ性能を引き出すための手掛かりとなります。バス釣りにおいてベーシックとなる3/8oz(約10g)のハードベイトであっても、その約1割、10%はフックの重さです。フック1つ交換しただけでハードベイトアクションはガラリと変わり、ハードベイトのフックを自分でセッティングするソルトの世界においてはフック単体の重量を気にすることは腕の良いアングラーにとって当然のこと。中にはあえて軽いフックと重いフックをセットした同じハードベイトを用意し、状況やシチュエーションによって使い分けるエキスパートもいます。小さなこだわりが生む大きな結果の差はフック交換の醍醐味と言えるでしょう。
掛け重視の細軸、耐久性重視の太軸、フックの線径を使うシチュエーションでチョイスする
フックの線径とはかんたんに言うとフックを構成する軸の太さのこと。トレブルフックはシングルフックと違い、多点掛けを利用して魚を絡めとるので「一点集中の貫通力」よりも「広く、浅く複数のフックポイントを掛ける事」が重要であり、基本的なメカニズムの違いを理解していれば理想のフック像が自ずと見えてきますが、フックを選ぶ際は軸の太さにもこだわってみると釣果を底上げする要因にもなります。細軸のトレブルフックは初期フッキング性能(掛かりの良さ)に優れているのに対して軸が細いので、無理なファイトや強引なファイトは禁物。フックを伸ばしてしまったり、折ってしまったりとトラブルの原因になりかねません。軸の太いフックは掛かりが浅くなりやすい分、一度しっかり掛けてしまえばこれ以上無い安定で魚とのやり取りを楽しむ事が出来ます。細軸と太軸、その特性は一長一短であり、使用するロッドやラインとの相性もありますが、自分の通いこむフィールドのアベレージサイズや自身のスタイルと相談してチョイスする事が正解への近道となっています。
トレブルフック交換によるハードベイトのチューニング例
ここではちょっと有名なフックのチューニング例を紹介します。
メディアで活躍する様な第一線級のアングラーさんも実践しているフック交換は、私達サンデーアングラーにとって目から鱗のアイデアばかり。フック交換を施した真意を探る事は知識の積み重ねにもなります。
フック交換によるリファイン例その1
フックチューニングで非常に有名なのは、上記画像のフックセッティング。クランクベイトの神様、リック・クランがタイニークランクに施した一見不釣り合いに見えるこのチューニングはビッグバスを確実に獲るためのセッティングとして知られていますが、実は「軽いタイニークランクのウエイトを上げてキャスタビリティー性能をUPさせる効果」もあります。このモデルではノーマル4.6gの自重に対しチューニング後は5.5gのウエイトアップに成功し、キャスタビリティー性能も大幅に改善されています。
フック交換によるリファイン例その2
上:純正フロントフック#7番
下:リューギのピアストレブル#6にフロントフックをリファインしたカスタムワイルドハンチ
エバーグリーンの名作クランクベイト、ワイルドハンチには純正でフロント#7、リア#5番のフックが搭載されていますが、フロントフックをひと回り大きくするチューニングはエキスパートアングラーの間で定番となっている手法の1つ。フックの番手を大きくしてもしっかりアクションする基本性能の高さが成せる裏ワザと言え、ビッグフィッシュを安定して仕留める有効なセッティングと言えるでしょう。
トレブルフック交換時に気を付けるべき失敗例
トレブルフック交換時には気を付けたいポイントがいくつかありますが、ここではハードベイトのフックを交換で避けて通りたい失敗例を紹介します。
フック交換の失敗例その1 フロント・リアフックは互いに絡まないようにする
フックはフロント、リア共に絡まないセッティングが基本となります。どうしてもフックサイズを大きくしたい場合は、思い切って2サイズ位大きくし、絡んでも直ぐに外れやすくする事も有効です。
フック交換の失敗例その2 フロントフックはリップに乗らないように
フロントフックがリップに乗ってしまうセッティングもNGとなります。ハードベイトはアピール力が強く、ミスキャストが命取りになる事もしばしば。せっかく決めたミラクルキャストもルアーがしっかりアクションしなければ無駄になってしまいます。
最強のトレブルフックおすすめ3選
個人的におすすめなトレブルフック三銃士。左からイチカワフィッシングのRCカマキリショートシャンク、リューギのピアストレブル、がまかつのトレブルRB‐Mショートシャンクモデル
それではここで、現在私が愛用しているトレブルフックを3つご紹介します。現在市場に出回っているトレブルフックはほとんど試してきましたが、基本的には下記に紹介する3アイテムで事足りています。各アイテムの特性を理解して使い分ければ皆さんの持つハードベイトはその実力を十分に発揮してくれるでしょう。
おすすめその1 がまかつ トレブルRB‐M ショートシャンクモデル
フック製造の老舗メーカーであるがまかつがリリースするトレブルRB‐Mはオーソドックスな形状ながら「ナノスムースコート」により、抜群の初期掛かり性能が魅力的なアイテム。クセの無いストレートなフックポイントは常に安定した実釣性能を発揮し、「ハイパーシールド」加工による優れた防錆効果やマジックアイなどユーザーの立場に立った設計で使いやすさはこれからフック交換に挑戦するアングラーさんにも優しい設計と言えるでしょう。オリジナルモデルである「トレブル RB-M」をショートシャンク化したデザインはボディレングスの短いプラグやフックの干渉しやすいトリプルハンガータイプのプラグに最適なバランスで、様々なシーンに幅広く対応します。
おすすめその2 リューギ ピアストレブル
様々なトップアングラーから絶大な支持を受けるリューギのピアストレブルはワイドゲイプ設計と内向きなフックポイントが特徴的なフック。今回紹介した中でも一番の強度を誇る設計は掛けた魚に主導権を奪われず、確実に取り込む為のデザインで、その信頼度は数あるトレブルフックの中でもトップクラスと言えるでしょう。ピアスフックで培ったオールベンドデザインと耐摩耗性特殊鋼材サイバーメタルの採用は、トレブルフックの宿命と言えるフックポイントのルアー本体や障害物等への断続的な接触でも、フックポイントが鈍りにくく鋭さが長続きする設計で、ここ一番で威力を発揮します。細軸のダガーシリーズや太軸特化のブルータルなど、ピアストレブル特有の使用感はそのままに、サイズや特化したモデルをチョイス出来る豊富なラインナップも、ピアストレブルシリーズが持つ大きな強みとなっています。
おすすめその3 イチカワフィッシング RCカマキリ
一部アイテムにおいて品薄状態が続くほどの人気を誇り、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで様々なハードベイトに純正採用されるほどの性能を誇るイチカワフィッシングのRCカマキリシリーズ。初期ガカリが命!のコンセプト通り、フックポイントに少し触れただけでもゾッとしてしまうようなシャープさは、このシリーズが持つ大きな魅力となっています。トレブルフックには珍しく、若干外側に設定されたフックポイントは初期掛かりを向上させながらも表面の滑らかなマジックコーティングで懐までしっかり貫通し、初期のフッキング成功率とキャッチ率を大幅に引き上げてくれます。太過ぎず細過ぎない線径強度とバラシの軽減に繋がる特殊ベンド形状、ルアーの動きを損なわないセンターアイの採用は非常にバーサタイルであり、私が使用するハードベイトのほとんどはこのフックを搭載しています。最近では小型ハードベイトや低水温期向けに細軸設定したライトワイヤーシリーズやショートシャンクモデルのリリースされ、スキの無いラインナップを実現しています。
最強のトレブルフックおすすめ3選とサイズの選び方 最後に・・・
ハードベイトを開発する際には、必ず開発コストというものがつきまとってきます。その中で真っ先に削られる部分と言えばフックやスプリットリングなどに掛かる固定費コストとなり、基本的には必要最低限の性能を持ったフックしか搭載されないのが事実。最近のハンドメイドルアーやオフショア用のルアーにフックがついてこない事を考えればフック交換は必須の作業であると同時にハードベイト本来の性能を左右する大きなファクターと言えるでしょう。フック交換は貴重なバイトをモノに出来るチューニングの基本であり、最も手軽で大きな効果を得られる手法。皆さんも自身の所有するハードベイト達の戦闘力アップにフック交換を取り入れてみてはいかがでしょうか?
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
エキスパートが愛用する本格派ハードベイトの記事はコチラ!!


