彼岸花が咲き終わり、秋になると必ず耳にする「ターンオーバー」
過ごしやすく穏やかな日中とは一転、朝夕の冷え込みが強く一日の中で気温差が大きくなるとターンオーバーの発生頻度も多くなりますが、皆さんはこのターンオーバーの仕組みやメカニズムをしっかり理解していますか?
現在では様々なメディアや文献で内容を確認する事が出来ますが、今回はそのメカニズムや構造、原理、対策などを出来るだけ深く、わかりやすく解説していきます。
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秋のバス釣りで良く聞くターンオーバーとは?
水に動きが無く、水面にいつまでも水泡が残る状態はターンオーバーが発生している最も典型的な合図。「終了している水」の中では生き物達も思うように活動出来ません。
ターンオーバーとは、水面付近の水が冷やされて沈む事で、ボトムにたまった悪い水をエリア全体に広げてしまう現象のことを言います。
主に朝夕の冷え込みが強くなり、気温と水温の逆転現象が起きやすい秋に発生するのでフォール・ターンオーバーとも表現されます。実際には春先にも発生しますが、気温よりも水温の方が暖かく、その差が大きくなりやすい秋は規模の大きなターンオーバーが発生しやすくなります。
ボトム付近の水というのは一般的に溶存酸素量が低く、水中の生き物達とっては活動を制限されてしまうやっかいなもの。しかもボトム付近の汚泥にはバス達にとって有害なモノも多く、たくさんの影響を与えます。
ターンオーバーはなぜ起こる?そのメカニズム
では、ターンオーバーはなぜ起こるのか?その秘密は水の特性と大きく関わっています。
ここではそんなターンオーバーのメカニズムに迫ります。
ポイント① 水は冷たい方が重い
まず、ターンオーバーを説明する上で欠かせない知識として水の特性があります。
その中でも水の重さ(比重)がとても大切で、水は4℃に近くなれば近くなるほど重くなる性質を持っているで、フィールドでは冷たい水ほどボトムに貯まりやすくなります。
つまり、水は冷たければ冷たいほど、ボトムに沈みやすくなります。
ポイント② ボトム付近の水ほど無酸素状態が強く、バスにとっては良くない水
水というのは基本的に水温が低いほど酸素濃度が上がりますが、ボトム付近の水は酸素と接触する機会がほとんどないため極端に酸素濃度が低くなります。(つまりバスにとっては息苦しさを感じる水)
また、ボトム付近は汚泥がたまりやすく、バスはもちろん、魚達にとって好ましくない水質であることがほとんど。一度通常の水と混ざり合えば様々な影響を及ぼします。
通常時
通常時の水温変化は大まかにこのようなイメージとなっています。
外気に触れる事の多い表層の水が一番暖かく、深くなるにつれて水温は低くなります。
また、この時期にボトムにたまる水は、質の悪い水であることが多いのでバス達にとって良くない水であることがほとんどです。
ターンオーバーが起こる時の状況
朝夕の冷え込みが強くなると、外気に触れる表層の水が冷やされるので比重が重たくなります。
重くなった水は沈もうとする力が強くなるので、その水に押し出されるような形でボトム付近の水が浮き上がり、全体の水と混ざり合ってエリア全体に広がってしまいます。
ターンオーバー後の状況
こうしてボトム付近にたまっていた悪い水がフィールド全体に広がり、バスをはじめ様々な魚の活性を短時間に大きく低下させるのがターンオーバーの正体です。
ボトム付近の水は酸素濃度が低いばかりか魚にとって有害な物質や、それまでの水質を一気に変えてしまうような成分が含まれており、人間に例えるなら軽い一酸化炭素中毒を起こすような煙の立ち込める部屋に入ったり、極端に呼吸しにくい高山にいきなり連れてこられたようなもの。
魚類を飼育したり、長期間観察した経験のある方なら知っていると思いますが、急な水質変化などは魚にとってのショックが非常に大きく、通常のコンデションに戻すにはかなりの時間を要します。
また、ターンオーバーは「風が吹いている状況で発生する」と言われますが、実際には無風でも起こります。ただ、風がある時の方が表層の水が冷やされるのも早く、全体の水が混じりやすくなるので無風状態よりも水質の変化が早くなる傾向があります。
小規模なフィールドや全体的に浅いフィールドではターンオーバーは起きないの?
小規模なフィールドや全体的に浅いフィールドではターンオーバーは起きないと言われることがありますが、実際には発生します。
表面の水が冷やされ、ボトムに悪い水がたまっていれば、水の逆転現象によってどんなフィールドでもターンオーバーは起こりますが、その影響度はかなり小さいものです。全体的に水温が変わらないような浅いフィールド(経験上最大水深が1m以内)ではほとんど影響を受けませんが、この時期は一日を通して気温差が激しく水温の上下も大きめ。そのようなフィールドでは別の理由で釣りにくくなっている可能性があるので注意が必要です。
ターンオーバーの見分け方
ここではターンオーバーが発生している水やエリアの見分け方を解説します。
ターンオーバーの規模によって様々な変化が見られますが、代表的な物は以下のようなものがあります。
水面に長時間水泡が残る
ロッドやルアーなどで水をかき混ぜた時、水面に出来た泡がいつまでも消えずに残っている状況では、ターンオーバーを疑うべきでしょう。
この見分け方は古くから知られている有名な方法なので知っている方も多いと思いますが、泡が発生して10秒以上残るようであれば、ターンオーバーしている可能性が高いと言えます。
細かいゴミが水面に浮いている、漂っている
こちらもターンオーバー中によく見かける状況。
本来であればボトム付近に沈んでいるであろう小さな浮きゴミを多数見かける場合は、ボトムの水が巻き上げられた証拠なので水質が急激に悪化している状態です。
ドブのようなにおいがする
ターンオーバーして間もない状況ではヘドロというかドブをさらったようなにおいがすることもあります。
フィールドの特性やコンデションにもよりますが、一般的にボトムの水というのは腐っていることが多く、独特な悪臭を放つことがあるので、いつも釣りをしているフィールドで、このような「におい」に気づいたら他の方法を試してターンオーバーしているかどうか調べてみましょう。
いつもより濁っている
ターンオーバーしている時によく見かける最後の特徴としては、いつもより水が濁りやすいという特徴があります。
その時その時のシチュエーションや状況によって濁りの強弱はありますが、一般的にターンオーバー中は水が濁りやすく、「特に濁りが発生する要素が無いのに水が濁っている」場合は注意が必要です。
ターンオーバーしているエリアでは、この画像のように水面に泡が残るだけでなく、小さなゴミが浮いていたり、水が濁ったりします。慣れてくればかんたんに見分ける事が出来るので、エリア選びの時はしっかりと「水」を見極めるようにしましょう。
ターンオーバー攻略法
ターンオーバーを攻略する方法はリアクション要素の強いルアーを使うなど様々な方法がありますが、一番かんたんで効果的なのは「ターンオーバーの影響を受けない、または受けにくい、少ない場所」をねらうことに尽きます。
ここではそんなターンオーバーの影響を最小限に抑えられる代表的なポイントを3つご紹介します。
水の動きが活発なエリアを選ぶ
ターンオーバーが最も起きやすく、長時間に渡って影響を受けるのは“水の動きがゆるい場所”となります。当然ながら川のような絶えず水が動いているフィールドや、流れ込み、流れ出し周辺はターンオーバーが発生しないのでその様なポイントを重点的にチェックしてみると良いでしょう。

ボトムの水が入りにくいシャローも有効
ターンオーバーの影響を受けにくいポイントとしてはシャローエリアも有望と言えます。
風の有無や向き、地形の状態やシチュエーションなどで影響の大小はありますが、悪い水がたまるボトムから最も離れ、遠い場所にあるシャローエリアはフィールドの中で一番影響を受けにくい場所と言えます。他のポイントはダメでもシャローだけは生きているという事が多々あるので必ずチェックしましょう。

ベジテーションやウィードなどでプロテクトされたポイントを狙う

ベジテーションやウィードの中は外部の水が入り込みにくく、水質や濁りの影響を受けにくいスポットとなっています。
また、水生植物の周辺はその働きによって水をクリアアップさせる効果も高く、いち早く通常の状態に戻りやすい場所でもあります。影響を受けにくく、立ち直りの早いポイントであれば壊滅的なターンオーバーの最中でも高い可能性を持った有望スポットと言えます。

ターンオーバー時に有効なルアーとは?
極端にバスのやる気が落ちるターンオーバー時は有効なルアーとそうでないルアーがハッキリ分かれます。ここではそんなターンオーバーの状況を打開出来るおすすめなルアーを3つご紹介します。
おすすめなルアーその① シャッド
この時期最も有効で高実績なのがシャッドの早巻き。
シルエットが小さくハイスピードリトリーブでもしっかりとアクションするシャッドはリアクション効果も高く、程よいアピール力は広いシャローエリアを手早くサーチ出来ます。
また秋口はメインとしているベイトフィッシュがクチボソやモツゴなど小さい事も多く、シャッドの特性とマッチした時期と言えます。
シャッドの早巻きであれば、圧倒的なボディバランスを持つジャッカルのソウルシャッドがおすすめ。大きめのフックは不意のデカバスとのやり取りも安心なハイバランスシャッドとなっています。

おすすめなルアーその② バイブレーション(メタルも有効!)
リトリーブスピードの自由度が高く、サーフェイス~ボトムまで様々なレンジを探れるバイブレーションも秋の最強となるハードベイトの一角と言えるでしょう。
他の季節と比べ水の透明度が上がりやすい秋はバスもセレクティブになりがち。ローライトなど状況によってはクランクやスピナーベイトも有効ですが、シチュエーションやコンデションを選ばないバイブレーションは用意しておきたいハードベイトと言えます。
さらにリアクションベイトの筆頭と言えるメタルバイブレーションもこの時期には非常に有効。どんなルアーにも一切反応が無いような究極なタフコンデション時、最後の切り札となってくれるでしょう。
レイドジャパンがリリースするレベルバイブブーストは、通常のバイブレーションとメタルバイブレーションの特性をあわせ持ったハイブリットタイプ。オッカパリゲームでは7g前後をメインに使えば優れた遠投性能とレスポンスでアングラーを強力にサポートしてくれるでしょう。

おすすめなルアーその③ スピンテールジグ
最後のおすすめルアーは低水温期に出番の多いスピンテールジグ。コンパクトなシルエットながらもしっかりとしたウエイトで使いやすいセッティングはこの時期にも高い実績を持っています。ロングキャストも可能で、ただ巻きからリフト&フォールまで対応する幅広さは、1つ持っているだけで心強い味方となってくれるでしょう。
優秀なスピンテールジグは数あれど、レンジコントロールやリトリーブスピードなどの使いやすさ、抜群の遠投性能と実釣能力を兼ね備えたデラクーは最もおすすめなスピンテールジグ。豊富な実績はタフコンデション時でも信頼してキャストを続けることが出来ます。

バス釣り ターンオーバー攻略法超解説 最後に・・・
今回はターンオーバーにフォーカスして解説をしてみました。
私自身、この記事を執筆するにあたり、もう一度おさらいの意味を込めてターンオーバーの勉強をしましたが、おもしろい事にターンオーバーをしっかりと、そして正確に解説した情報は意外と少なく、科学的な根拠がおかしなものや、理論上のつじつまが合わないものもたくさんありました。そのためこの記事は長年バス釣りを楽しんできた私の経験を元に書きましたが、私の知る限りのターンオーバーの正体はこのようなものです。
初心者の方にとってはその実態も解らず、ただただ釣れない原因として語られる事の多いターンオーバーですが、その内容を知識として持っていれば攻略することは思っている以上にずっとかんたん。
適水温にもかかわらず、春と違って釣るのがなかなかむずかしい秋は、様々な状態のバスが居るからこそ、正確な知識が釣果を大きく左右し、その積み重ねが大きな差となってきます。
この記事が皆さんにとって価値ある一匹へのきっかけになってくれたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。


